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第9回 『喘息とタバコ』

 タバコの煙には4000種類以上の粒子状、ガス状の化学物質が含まれています。そのうちニコチン、タール、一酸化炭素が三大有害物質といわれています。これらの有害物質は喫煙者自身はもちろん、副流煙として周囲の人たちにも受動喫煙の害をもたらします。

喘息患者さんとタバコ
 喘息患者さんの喫煙率は当然ながら、健常人よりも低いだろうと予想されますが、実際にはそうではありません。ある米国での調査では、喘息患者さんの喫煙率は27%で、全人口の喫煙率と同様でした。喫煙者と非喫煙者に分けて比較すると、喫煙者の方で喘息症状や日常生活の障害が強く、タバコが喘息症状を増悪させていると考えられました。
 タバコをすう喘息患者さんでは慢性の咳が主症状であることが多く、またタバコは喘息の発症率を上昇させ、特に女性でその傾向が強いといわれています。

タバコが喘息を増悪させる理由
 タバコは気道の炎症をひきおこし、気管支の血管透過性を亢進させることによって、喘息症状を増悪させます。またタバコをすうと全身の免疫系が活性化されるため、抗原を吸入した時のアレルギー反応が強く起こるようになります。さらにタバコは気道過敏性を亢進させるため、喘息発作が起こりやすくなります。

喘息死とタバコ
 タバコと入院、死亡の関係を調べた調査では、重症の喘息発作で人工呼吸管理を必要とした患者さんのうち、16%に入院中死亡がありましたが、喫煙者の死亡率は非喫煙者の2倍でした。また一度退院したあと再入院する比率は喫煙者で非喫煙者の2倍でした。このようにタバコをすう喘息患者さんは、より重症で死亡率も高いので、通常の喘息治療だけでなく、禁煙療法が重要な課題であると考えられます。

 タバコはこのほか、肺気腫、慢性気管支炎などの病気をひきおこします。喘息患者さんがこれらの病気を併発すると、呼吸困難が増悪するため在宅酸素療法が必要となることがあります。タバコをすう喘息患者さんは喘息治療の一部として禁煙に取り組む必要があります。具体的な方法についてはまず主治医に相談してみましょう。必要があれば喘息治療とは別に禁煙外来を受診して、禁煙プログラムを実行するとよいでしょう。このホームページでも禁煙方法についてご紹介していく予定です。