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第33回 『睡眠時無呼吸症候群』

 睡眠時無呼吸症候群は、夜間睡眠中にいびきを伴って呼吸が止まる病気です。熟睡できないため、昼に眠くなり仕事の能率が低下します。新幹線の居眠り運転など、交通事故の原因ともなります。

睡眠時無呼吸症候群の診断
 夜間7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上みられる、もしくは1時間に5回以上無呼吸がみられるとき診断されます。睡眠時検査を行い、重症度に合わせて治療を行います。

睡眠時無呼吸症候群の症状
 通常以下のような自覚症状がみられます。

  1)朝起床時に頭痛がする。頭が重い。
  2)昼に眠くなる。居眠りする。
  3)夜間睡眠中に目覚める、トイレに行く。
  4)意欲が低下し、注意力が散漫になる。

 睡眠中のいびき、無呼吸は本人は分かりませんが、家族から指摘されている人は要注意です。

睡眠時無呼吸のメカニズム
 睡眠時無呼吸症候群では睡眠中にのどの筋肉が弛緩したり、肥満のためのどが狭くなりいびきをかきます。さらに上気道の閉塞が起こると呼吸ができなくなり無呼吸になります。酸素不足となり交感神経が興奮し、血圧が上昇、覚醒反応を起こします。眠りが浅くなると筋力が回復し、閉塞が改善するため呼吸が再開します。そして再び睡眠、筋弛緩、無呼吸と繰り返します。

睡眠時無呼吸の影響
 1)無呼吸から呼吸を再開する時に覚醒反応が起こるため、睡眠深度が浅くなります。そのため昼に眠くなり、集中力が低下します。
 2)無呼吸のため酸素不足となり、交感神経が興奮し脈拍が増加、高血圧、不整脈を起こします。これらの症状は睡眠時無呼吸症候群の治療で多くは改善がみられます。
 3)日中眠いため、身体活動が低下し肥満が増悪します。睡眠時無呼吸症候群では上半身肥満、インスリン抵抗性、耐糖能障害、高中性脂肪血症の合併が高頻度にみられます。その結果虚血性心疾患、脳血管障害のリスクが高まります。

治療
 1)中等症以上では持続陽圧呼吸法が最も多く行われます。睡眠中に鼻からマスクを通して空気を送り込み、気道の閉塞を防ぎます。マスクがずれたり、鼻が乾燥したりすることがあり、慣れるまで練習が必要です。
 2)減量によって睡眠時無呼吸症候群の症状は軽減します。睡眠時無呼吸症候群では生活習慣病の合併も多く食事療法、運動療法の併用が必要です。
 3)軽症ではスリープスプリントというマウスピースが使用されます。睡眠中歯に固定して舌を持ち上げて気道を広げます。歯科で作成します。
 4)耳鼻科ではのどの奥を広げる手術をします。主要な狭窄部である舌根部を治せないため、再発率が高いのが問題です。

 近年肥満の増加に伴って、睡眠時無呼吸症候群患者が増えています。患者の8割は男性で、国内の患者数は200万人と推定され、決してまれな病気ではありません。思い当たる方は呼吸器科で相談してみましょう。