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第5回 『アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎』

生活習慣病
 アレルギー性鼻炎の患者では約4割に副鼻腔炎の合併がみられ、それによって鼻炎症状の増悪が認められます。副鼻腔炎は蓄膿症とも呼ばれる、膿性の(色のついた)鼻漏(はな)がでる鼻づまりの病気です。病気の原因としては多くは細菌やウイルス感染によるもので、肺炎球菌、インフルエンザ菌や黄色ブドウ球菌などがよく検出される細菌です。
 副鼻腔炎が慢性化(ながびいたり)したり、難治性(治りにくくなる)となる原因にバイオフィルムという病態があります。これは細菌が自分の表面にムコ多糖からなる膜(バイオフィルム)を作り、その結果抗生物質が細菌まで到達できないため効きにくくなることをさします。これに対する対策が慢性副鼻腔炎では重要な治療となります。

副鼻腔炎の治療
 副鼻腔炎の治療にはマクロライド系抗生物質が使用され、鼻漏の改善が50-60%と、優れた治療効果が報告されています。この抗生物質は有効菌種(本来この抗生物質が効く細菌)以外にも有効性が認められています。その機序として、粘液の過剰な分泌を抑制する、好中球(炎症細胞)が副鼻腔に集まるのを抑え粘膜の障害を減少させることがわかっています。
 実際の治療ではマクロライド系抗生物質は細菌感染を治療する量の半分程度の量で投与されます(少量長期投与)。この薬は少量でも炎症細胞に高濃度に取り込まれるため、十分な治療効果が得られます。投与量が少ないため副作用もほとんどありません。マクロライド系抗生物質にはバイオフィルムの形成を抑制したり破壊したりする作用もあり、慢性型、難治性の副鼻腔炎にも有効性が認められています。
 マクロライド系抗生物質の治療期間については、細菌の耐性化(抗生物質が効きにくくなる)を防ぐためにも、まず3ヶ月間を1クールとして投与します。有効な場合は3-6ヶ月まで治療を継続します。鼻茸を合併している場合などで治療効果が不十分な場合は、内視鏡下手術など耳鼻科的治療が行われます。治療終了後、症状が再燃(わるくなる)場合もありますが、マクロライド系抗生物質は初回治療と同等な効果が期待できますので、再度受診し治療を受けるようにしましょう。

副鼻腔炎を合併したアレルギー性鼻炎の治療
 副鼻腔炎を合併したアレルギー性鼻炎では、抗アレルギー薬とマクロライド系抗生物質併用療法が行われ、4週間投与で25%の患者に有効、12週間投与で100%の患者に有効と、長期投与で優れた効果が認められます。抗アレルギー薬内服によっても鼻炎症状が改善しない場合、副鼻腔炎が合併している可能性があります。診断を受けて、有効な治療を受けましょう。