第29回 尿酸値が高い、痛風

 痛風はかつて「ぜいたく病」とか「帝王病」とよばれ、日本人には少ない病気でした。しかし、食生活の欧米化やアルコール摂取などに伴って増加し、現在ではだれもがかかる、よくある病気になりました。

関節症状

 痛風の特徴は関節の激しい痛みと腫れです。症状は突然出現し、多くは足の親指にみられます。痛みのため、歩くことも靴を履くことも困難になります。
 痛風の原因は尿酸で、これは古い細胞の残骸です。体内で作られる尿酸が多過ぎたり、尿に排泄される量が少ないと血液中の尿酸が増えて、高尿酸血症となります。この状態が続くと、尿酸は関節に結晶としてたまります。これが異物として認識され、激しい炎症反応が起こります。これが痛風発作です。

リスクファクター

 痛風は生活習慣病のひとつです。危険因子がないかどうかチェックしてみましょう。

  1)男性(痛風患者の98%は男性です。)
  2)肥満(体重増加は尿酸値を高めます。)
  3)アルコール(アルコールは尿酸産生を増やします。
    特にビールは尿酸のもとになるプリン体を多く含むため、尿酸値が上昇します。)
  4)中性脂肪が高い
  5)食べ過ぎる
  6)ストレス

 あてはまる点が3つ以上ある方は要注意です。健康診断や内科で、検査を受けましょう。

関節外症状、合併症

 関節炎のほかに、手足や耳たぶに硬い痛風結節ができたり、尿路結石などの症状が出現します。特に怖いのは腎臓の障害です。尿酸が腎臓に沈着して腎機能が低下します。重症の場合、人工透析などが必要になることもあります。
 痛風患者さんでは、このほかに、糖尿病、高血圧、高脂血症を併発しやすいことが知られています。これらの合併症は脳卒中や心筋梗塞の原因となり、生命に危険を及ぼすことがあります。痛風で本当に恐ろしいのはこれらの合併症です。治療上最も大切な事は、関節の痛みが改善した時点で治療を中断せず、その後尿酸値のコントロールと合併症の予防を継続する事です。

治療

 痛風発作時にはまず炎症をおさえ、痛みを軽減する治療を行います。これには消炎鎮痛薬を使用します。痛みがおさまった後に、尿酸値を下げる薬を開始します。
 これには尿酸合成阻害薬と、尿酸排泄促進薬の2種類があります。
 さらに合併症を予防するためにも、生活習慣改善が大切です。上記リスクファクターの2)-6)を減らすようにしましょう。つまり、肥満を解消する。アルコール(特にビール)を控える。水分を十分にとる。軽い運動をする。ストレスを発散する。以上を実行しましょう。

 高尿酸血症は痛風発作が起こるまで、5-10年位は無症状です。健康診断などで高尿酸血症を指摘された時は、自覚症状がなくても内科を受診し、正しい診断と生活習慣指導を含む治療を受けましょう。

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